- 店舗デザインの カエル・デザイン・プロジェクト TOP
- カエルの内装建築コラム
- 店舗デザイン
- 店舗デザインの費用相場と投資効果|失敗しない予算計画のポイント
2025年6月23日店舗デザインに関する話題

お店づくりにおいて、店舗デザインは単なる見た目の問題ではなくビジネス戦略の一部であると考えられます。
適切な店舗デザインは顧客体験を向上させ、ブランド価値を生むと共に売上に影響します。しかし、多くの経営者が「どれくらいの費用をかけるべきか」「どのような投資効果が得られるのか」という点で判断に迷っているのではないでしょうか。
本記事では、店舗デザインに関わる費用相場の読み方やデザインの重要性を投資の視点で解説します。
店舗内装は単なるコストではなく、将来の収益を生み出す投資として捉えることが成功への第一歩です。
目次
店舗デザインの費用相場を読み解く
店舗内装の費用は、業種・立地・規模やデザインの質によって大きく変動します。
多くの経営者が「坪いくら」という相場感で考えがちですが、実際には様々な要素が絡み合って最終的な費用が決まります。重要なのは、見積書に記載される項目を正確に理解し、何にどれだけのコストがかかるのかを把握することです。
費用相場を知ることは重要ですが、それ以上に各費用項目の意味と必要性を理解することが、予算計画の基本となります。

デザイン・設計費と工事科目
店舗内装プロジェクトでの費用は、大きく「デザイン・設計費」と「工事費」に分けられます。
デザイン・設計費は、コンセプト立案からプラン作成、詳細設計、施工図作成までの専門的サービスに対する対価で、一般的には工事費の10〜15%程度が相場とされています。
工事費は「仮設工事」「解体工事」「内装工事」「電気設備工事」「空調・換気工事」「給排水工事」など複数の科目に分かれています。それぞれの科目ごとに専門業者が入ることも多く、見積書を見る際はこれらの科目別の内訳を確認することで、どこにコストがかかっているのかを正確に把握できます。
それらに加えて、業態に応じた各種申請費用なども考慮する必要があります。
適切な予算配分のためには、この基本構造を理解することが不可欠です。
業態共通の必要経費項目
店舗内装工事において、業態や物件の状態を問わず必要となる経費項目があります。
- ・設計料 … デザイン・設計費にあたり、プロジェクトの方向性を決める重要な投資です。
- ・現場管理費 … 設計意図通りに工事が進められているかを確認するための費用で、品質確保に直結します。
- ・官庁手続きの申請費用 … 建築確認申請や消防申請、保健所申請など、法的要件を満たすために必要な費用です。
坪単価の考え方と算出方法
店舗内装の費用を検討する際、よく「坪単価」という言葉を耳にします。
これは工事費総額を施工面積(坪数)で割った金額であり、予算の目安として広く用いられています。例えば、500万円の工事費で20坪の店舗なら、坪単価は25万円ということになりますが、実際にはこの数字は業態や地域・グレードによって大きく異なります。
一般的に、カフェなどの飲食店では坪30〜80万円、美容室では坪25〜60万円程度が相場とされています。また、東京や大阪などの大都市では地方に比べて1.2〜1.5倍程度高くなる傾向があります。
重要なのは、その店舗に必要な機能や空間の質を考慮したうえで適切な坪単価(と工事予算)を設定することです。
店舗デザインのご相談受付中
内装のイメージが固まっていない方もご安心ください。
カエル・デザイン・プロジェクトなら、プロのデザイナーがお客様に最適なプランをご提案します。
工事費用の内訳を知ろう
店舗の工事費用は業態によって大きく異なります。
工事費用を考える際は、「いくらかかるか」という総額だけでなく、「何にいくらかかるか」という内訳を理解することが重要です。
予算計画を立てる際は、自店のコンセプトや優先すべき機能を明確にした上で、各工事科目にどれだけ予算を配分するかを検討しましょう。
適切な予算配分が、限られた費用で最大の効果を生み出す鍵となります。
飲食店の工事に関わる費用

飲食店の内装工事では、保健所の基準を満たす厨房設備の設計が最重要です。
グリーストラップ(油分分離槽)の設置費用に20~50万円、排煙ダクト工事に坪あたり3~5万円掛かることを考慮しておきましょう。
厨房レイアウトは「調理→盛り付け→提供」の動線を直線化するなどで、作業効率を向上させることが可能です。
客席部分では床材や照明の選定が、費用と内装デザインの両面で焦点となります。
消防法に基づく防火設備(消火器・自動火災報知器)に10~30万円、保健所申請費用は5~15万円を見込んでおきましょう。
美容室の工事に関わる費用

美容室の工事ではシャンプー台の給排水配管設計が鍵となります。シャンプー台本体とは別に、床上配管の場合は1mあたり約1.5~2万円の追加費用、床下配管では床上げ工事に坪あたり5~8万円が必要です。
コンセント配置は、ドライヤー用に各席2口(1口あたり工事費約1.5万円)、パーマ機器用に200V専用回路(1回路あたり10~15万円)を確保します。
セット面の鏡は高さ120cm×幅80cm以上のサイズ(1枚あたり8~15万円程度)を想定します。
LED照明は演色評価数Ra90以上、色温度4000Kのものを選定しましょう。
美容所登録申請では、施術スペースの面積(1席4㎡以上)を確保し、洗面設備(2人に1台)の基準を満たす必要があります。また、待合スペースの設置も自治体によっては必要となる場合があります。
美容エステの工事に関わる費用

美容エステサロンでは施術ルームの品質が特に重要となります。
石膏ボード二重張り(坪8~12万円)に吸音材(ロックウール 坪3~5万円)を組み合わせるなどして、防音仕様を達成します。
快適な施術のための個別空調システムは、1室あたり25~40万円程必要で、外気導入機能付き換気扇(1台約8~15万円)を併用する場合もあります。
プライバシー保護のために受付から施術室までの動線にS字カーブを設けたり、可動式パーティション(1mあたり3~5万円)で視線を遮断することもご検討ください。
内装材に抗菌クロス(坪2~4万円)を使用したり、間接照明や無垢材フローリング(坪6~10万円)等を組み合わせることで、よりリラックスできる店内空間とすることも重要です。
店舗デザインのご相談受付中
内装のイメージが固まっていない方もご安心ください。
カエル・デザイン・プロジェクトなら、プロのデザイナーがお客様に最適なプランをご提案します。
工事費用を抑えながらクオリティを維持する工夫
限られた予算内で最大の効果を得るためには、「バリューエンジニアリング(VE)」の考え方が有効です。これは単純なコスト削減ではなく、機能や価値を維持・向上させながら最適なコストバランスを追求するアプローチです。
例えば、顧客の目に触れる部分と裏側で使用する内装材を区別したり、汎用品と特注品を適材適所で使い分けたりすることで、無駄なコストを削減できます。
また、設備投資には優先順位をつけることも重要です。
店舗の「顔」となる入口周りやメインの客席エリアには予算を多めに配分し、バックヤードや倉庫などは機能性重視の実用的な設計にするなどの工夫が考えられます。
ただし、安全性や耐久性に関わる部分でのコスト削減は避けるべきでしょう。
適切なVE提案を受けるには、デザイナーや施工会社との信頼関係構築が不可欠です。
ここからは、工事費用を抑えつつ店舗の機能や価値を維持するための工夫についてご紹介します。
内装材の選定方法と費用対効果

内装材の選定は、店舗の雰囲気を決めるだけでなく、予算にも大きく影響します。
バリューエンジニアリングの観点からは、「見せる部分」と「見せない部分」で材料のグレードを変えることが有効です。
例えば、顧客の目に触れる壁面や床には質感の良い材料を使用し、天井や裏側のエリアには機能性重視の材料を選ぶといった方法があります。また、CD(Cost Down)案として、似た見た目でも価格帯の異なる材料から選択することも可能です。
本物の大理石ではなく大理石調のメラミン化粧板を使用するなど、見た目の印象を保ちながらコストを抑える選択肢があります。
ただし、削るべきでない部分もあります。特に床材や水回りなど、耐久性や安全性に関わる部分では適切な品質を確保することが長期的には経済的です。
最終的には「見た目のインパクト」と「予算」のバランスを考慮した材料選定が理想的です。
段階的な投資計画の考え方
店舗デザインにおいて、すべての理想を一度に実現することが難しい場合は、段階的な投資計画を検討するのが賢明です。
オープン時に必要不可欠な設備と内装に予算を集中し、その他の要素は営業を始めてから順次追加していく方法です。
例えば、飲食店であれば厨房設備や客席の基本レイアウトを先行投資し、装飾や高級什器は売上に応じて徐々に導入するといった計画が考えられます。この際、将来の拡張や変更を見据えた設計をしておくことが重要です。配線や配管の余裕を持たせる、可動式の什器を活用するなどの工夫が有効でしょう。
また、メンテナンス費用も長期的な投資計画に含めるべき重要な要素です。
安価な内装材が数年で交換が必要になるケースや、高額設備のメンテナンス費用が予想以上にかかるケースも少なくありません。
初期投資だけでなく、ランニングコストも含めた総合的な視点で投資計画を立てることが店舗経営の安定につながります。
店舗デザインのご相談受付中
内装のイメージが固まっていない方もご安心ください。
カエル・デザイン・プロジェクトなら、プロのデザイナーがお客様に最適なプランをご提案します。
店舗デザインの投資効果
店舗デザインへの投資は単なる見た目の良さだけでなく、ビジネスパフォーマンスに直結する戦略的意思決定です。
適切にデザインされた店舗空間は競合との差別化につながり、価格競争に頼らないビジネスモデルの構築を可能にします。
また、効率的な動線設計や機能的なレイアウトは、スタッフの作業効率を高めサービス品質の向上と運営コストの削減を同時に実現できるでしょう。
店舗デザインへの投資は、見えないマーケティングコストであると同時に、事業の長期的成功を支える基盤投資でもあるのです。
費用対効果を最大化するためには、顧客視点と経営視点の両方からデザインを検討することが必要です。
では、実際にどの様な点に注意して投資対象を検討するのが良いでしょうか?
集客力向上とブランド価値に対する効果

内装のデザイン、色使い、素材感などは、言葉以上に強く顧客の感覚に訴えかけブランドの世界観を体現します。
高級感のある内装は商品やサービスの価値を高く感じさせ、価格設定の正当化にもつながります。さらに、SNS時代においては俗に言う「映える」店舗デザインが口コミ効果により無料の宣伝効果を生み出してくれます。
従業員のモチベーション・作業効率への影響
店舗デザインは、お店を利用するお客様だけでなく、そこで働くスタッフにも大きな影響を与えます。
例えば、効率的な動線設計により無駄な移動が減少すれば、同じ人数でもより多くの顧客に対応できるようになります。飲食店では厨房からホールへの動線、美容室ではシャンプー台から施術席への移動など、細部にわたる動線計画が業務効率を大きく左右します。
長時間働く場所だからこそ、適切な照明、温度管理、休憩スペースの確保などが重要です。快適な労働環境はスタッフのモチベーションと定着率にも好影響を与え、スタッフが誇りを持って働ける洗練された空間は、接客の質向上にもつながります。
お客様に見えにくい部分への投資も、長期的には経営効率の向上に結びつけることができるでしょう。
-
[ミニコラム]投資回収期間の考え方
-
- 一般的に、店舗内装の投資回収期間はテナント契約期間と密接に関連します。
例えば、5年契約のテナントであれば、理想的には3〜4年以内に内装投資を回収できる計画が望ましいでしょう。
契約更新前に回収ができていれば、更新時の判断に余裕を持たせることができます。 -
- 参考:投資回収の計算式
内装投資額 ÷( 月間売上 × 粗利率 − 人件費・家賃等の固定費 )
- 参考:投資回収の計算式
- 例えば、1,000万円の内装投資に対して月間利益が30万円の場合、約33ヶ月(2.8年)での回収計算となります。
ただし、店舗デザインの効果は単純な投資回収だけでは測れません。
ブランド価値の向上や顧客ロイヤリティの獲得など、長期的・間接的な効果も考慮すべきです。 - 特に新規出店の場合は、初期の認知度向上や顧客基盤構築のための投資として捉え、やや長めの回収期間を想定することも戦略的判断として有効でしょう。
失敗しない予算計画のポイント
店舗デザインの予算計画を成功させるためには、まずブランディングの観点から店舗の目指す世界観を明確にすることが重要です。
「どのような顧客に、どんな体験を提供したいか」という点から逆算して予算配分を考えるアプローチが効果的です。
また、イニシャルコストだけでなく、メンテナンスや更新にかかるランニングコストも含めた総合的な試算が必要となります。
安価な内装材が数年で劣化して結局高コストになるケースも少なくありません。
良い見積りに辿り着くためには、複数の業者から見積りを取得し、単に総額だけでなく内訳の詳細を比較検討することがポイントです。その際、自分の要望や予算感を明確に伝え、VE提案を求めることで最適な解決策が見つかることも多いでしょう。
カエル・デザイン・プロジェクトでは、予算計画の初期段階からクライアントと綿密な対話を重ね、ビジネス目標とデザイン、そして予算のバランスを取りながら最適な提案を行っています。
本記事で触れているような、事業計画に関するご相談も受け付けております。
お気軽にお問合せください。
- カエル・デザイン・プロジェクト株式会社
- 内装デザイン・設計のご相談はこちら