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- オフィスの原状回復で押さえたいポイントは?流れや費用・注意点を解説
2026年2月9日オフィスデザインに関する話題

賃貸オフィスからの移転や退去時には、使用していた空間を入居前の状態に戻す「原状回復工事」を実施する必要があります。
移転や退去をスムーズに行うためには、原状回復工事についての基礎知識を備えることと、入居時からのしっかりとした想定や契約内容の把握、退去前の十分な準備が鍵となります。
特にオフィスの場合は、住宅とは異なるルールや慣習も存在しており、費用感や工事範囲の取り決め等に不安を覚える担当者の方も多いと思われます。
本記事では原状回復工事の基本から、賃貸オフィスならではの注意点、工事の流れ、トラブル回避に役立つポイントを解説いたします。
目次
原状回復の定義とオフィスにおける扱い

まず始めに、法的に定義される原状回復工事の一般的原則や、賃貸オフィスにおける適用についてご紹介します。
原状回復の一般定義
原状回復工事とは、賃貸借契約終了が終了して退去する時に、借主が物件を借りた当初の状態に戻すための工事を指し、民法第621条では次のように定義されています。
- 『賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。 ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。』
- 【出典:e-Gov 法令検索 民法第六百二十一条】
このように民法では、借主が使用を開始した以降、経年劣化や通常使用で起こる摩耗を除いた範囲の物件の損傷についてのみ、入居時の状態に戻す義務があることを定めています。
注意したいのは、こちらはあくまで法的拘束力のない「任意規定」と解釈されており、賃貸借契約書およびそこで定める「特約」の内容がより優先されて扱われる点です。
当事者同士の合意があれば公序良俗に反しない範囲の任意の内容で別途「特約」の取り交わしが可能であり、その部分に対する認識の差がトラブルを招くケースも少なくありません。
オフィスにおける原状回復の特徴
賃貸住宅の原状回復ならば民法の原則に基づいて借主負担の対象外とされるような経年劣化や通常使用損耗も、賃貸オフィスの契約では特約により借主の負担範囲と定められているケースが多いです。
オフィスにおける原状回復には次のような特徴があります。
- ◦ 経年劣化も含めて借主負担とする特約が有効とされるケースが多い
- ◦ 入居時に施した内装造作は該当範囲の居抜き渡し等が認められない限り、基本的に全て撤去した上での原状回復が求められる
- ◦ 原状がスケルトン状態(躯体のみの状態)であったならスケルトン状態への復帰が求められることが一般的
- ◦ 契約自由の原則により、適正な範囲であれば特約の有効性が認められる
住宅賃貸とオフィスの賃貸契約とで、このような違いが生じる背景としては、事業者によるオフィス利用が入居時にレイアウト変更や内装工事もセットで行われるケースが多く、使用後の想定が立てにくいといった要因があるとも言われています。
生活維持を目的とした住居利用と比べ、貸主にとって経年変化や通常使用の損耗の度合いを一概に予見しにくいことから、特約で原状回復の内容、範囲、指定工事業者などを定めることが一般的となっています。
そのため、賃貸オフィスの契約時には、特約に定められる原状回復条項の詳細な確認や条件の明確化が非常に重要です。
オフィスの原状回復工事の内容と流れ
次に、オフィスにおける原状回復工事で一般的に行われる内容と、完了までの大まかな流れを確認していきましょう。
一般的な原状回復工事内容
物件条件や求められる原状回復の仕様により異なりますが、一般的に行われる工事や作業内容としては以下が挙げられます。
内装造作の撤去
- ・パーテーション(間仕切り壁)の撤去
- ・天井仕上げ材の撤去(システム天井、化粧板等)
- ・床仕上げ材の撤去(カーペット、タイルカーペット、フローリング等)
- ・壁紙・クロスの張替えまたは塗装
- ・会議室や応接室などの造作家具の撤去
電気設備・空調設備の撤去または原状復帰
- ・増設したコンセントや照明器具の撤去
- ・配線・配管の撤去
- ・空調設備の増設分撤去
- ・電気容量の変更を元に戻す工事
通信設備・LAN配線の撤去
- ・LANケーブル配線の撤去
- ・電話回線の撤去
- ・サーバールーム等の特殊設備の撤去
看板・サイン類の撤去と外壁の補修
- ・エントランスや外壁に設置した看板・サインの撤去
- ・看板撤去後の壁面補修・塗装
- ・共用部に設置した案内サイン類の撤去
原状回復工事に伴う産業廃棄物処理
原状回復工事としてどこまでの内容を行うのかは、「入居時の状態に戻す」か「スケルトン渡し」、もしくは「居抜き渡し」かによって左右され、費用も大きく変わってきます。
賃貸借契約書に「明渡し条項」や「原状回復条項」といった特約条項として明記され、法的な義務として扱われるので、必ず事前に内容を確認した上で必要な工事を行うようにしましょう。
退去および工事完了までのスケジュール
原状回復工事完了までの一般的なスケジュール感について、退去日までの時系列の具体例で追っていきます。

- ◦ 退去6ヶ月前:退去通知の提出
オフィス賃貸借契約では、退去予定日から「解約予告期間」に定められた期間を設けて通知が義務付けられています。
解約予告期間は6ヶ月前程度で定められている場合が多いですが、契約書の内容によっては3ヶ月前や1年前と定められている場合もありますので、まずは契約書の解約条項を確認しましょう。
この期間を守らないと退去後も賃料が発生し続ける、解約違約金が生じるなどの可能性があるため、注意が必要です。 - ◦ 退去3〜4ヶ月前:現地調査と工事見積もり取得
原状回復工事業者による現地調査の実施を手配し、工事見積もりを依頼をします。
見積もり内容を精査し、不明点があればこのタイミングで質問・確認を欠かさないようにしましょう。
貸主が業者を指定している場合も多いですが、もし相見積もりが許可されている場合は、この時期に複数社から見積もりを取得することで適正な費用を見定めることができます。 - ◦ 退去2〜3ヶ月前:工事内容の確定と契約
見積もり内容を確定し、工事業者と契約を締結します。
管理会社・貸主および工事業者間で工事スケジュールを相談し、退去日に間に合うよう調整します。 - ◦ 退去1ヶ月前〜退去日前:引越し準備と原状回復工事
オフィスの引越しと並行して、あるいは引越し完了後に原状回復工事に着手します。
工事期間は物件の規模や解体作業の必要量に依存しますが、100坪以下のオフィスでは約2〜4週間、100坪以上では4週間以上となるのが標準的です。
このほか、テナントの条件次第でビル管理規定による工事可能な時間の制限や、工事申請に要する期間もあり、スケジュールを立てる上では考慮に入れる必要があります。 - ◦ 退去日前:完了検査と引き渡し
貸主または管理会社の立会いのもと、原状回復工事の完了検査が行われます。
工事内容が契約通りに完了していることを確認し、問題がなければ物件を引き渡します。
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オフィス原状回復工事の費用相場

オフィスの原状回復の工事費用の大まかな目安と、費用を左右する要因をご紹介します。
規模別に見る坪単価の目安
オフィスの原状回復工事費用は物件の状況や工事内容によって変動がありますが、都市部の標準的な物件を想定した場合の規模別坪単価の目安としては概ね次のようになります。
- ◦ 小規模(30坪以下):坪単価5~8万円
- ◦ やや小規模(30~50坪以下):坪単価10~12万円
- ◦ 中規模(50~100坪程度):坪単価15万円前後
- ◦ 大規模(100坪以上):坪単価20万円前後
一般的には必要工事範囲が大きくなるほど、後述するような要因が重なりやすく原状回復費用も高額となる傾向があります。
計画段階の費用の概算として坪単価は参考値となりますが、正確な費用の把握には実際に業者に現地調査を依頼の上、見積の取得が必要です。
個別の条件によっては目安から外れた金額となることもありますので、どの部分の費用割合が大きいか内訳もしっかりと確認するようにしましょう。
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「坪単価」とは?
- 坪単価は、物件の賃料や工事費用などを1坪あたり(1坪 = 約3.3㎡)で表した金額を指し、面積を基準とした費用指標として用いられます。
一般的には立地や地域、建物のグレード、構造や満たす耐震基準など様々な要因に左右されます。
店舗やオフィスとして利用する物件選定の際に、必要な面積と予算やスペース利用計画を照らし合わせ、費用感として大きな乖離が無いかを確認する計画段階の基準指標として重要です。
費用を左右する主な要因
オフィスの規模の他にも原状回復工事の費用を変動させる要因は多岐に渡り、具体例としては次のような要因が挙げられます。
- ◦ 要求される原状回復の仕様
居抜きでの引き渡しが認められれば工事内容の大幅な削減ができます。
逆に、ハイグレードなビルの標準仕様に戻す場合などは工事費用が嵩むことがあります。 - ◦ 工事区分の割合および指定工事業者の存在
オーナーが特約で工事業者を指定している、もしくはそもそも工事業者を指定されるB工事割合が大きい場合は注意が必要です。
業者間の競争原理が失われ費用が高額化しやすくなるため、工事区分の変更や相見積もりを取る交渉の余地があるか貸主や管理会社に確認しましょう。 - ◦ 造作の複雑さや増設要素の多さ
設備増設や特殊設備導入、大量の間仕切りやその他複雑な造作が存在するなど、撤去の手間がかかる要素が多いほど費用も大きくなります。 - ◦ 物件条件による影響
テナントの階層が高く搬出に使えるエレベーターが無い場合の搬出コストや、騒音等の事情で夜間工事が必要といった、物件の置かれた状況によっても費用が膨らむ場合があります。
上記のような原状回復工事の費用が高額化する要因がないか、事前の把握が進行計画を立てる上で重要です。
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トラブル回避のための注意点

オフィスの原状回復工事を進めるにあたって、トラブルを防止するためのポイントを、起こりやすいトラブルの例と照らし合わせてご紹介します。
契約時の重要事項をよく確認する
これまでにも述べた通り、賃貸借契約書およびその特約で定められる内容が原状回復工事において極めて重要になります。
この部分の詳細な確認を怠った場合、次のようなトラブルを招くことになります。
- ◦ 確認が不十分で結果的に工事完了まで要した費用が想定を大きく超過してしまう
- ◦ 原状回復への認識の相違から完了と見なされず、予定していた日程で退去できなくなってしまう
認識合わせ不足によるトラブル発生を未然に防ぐため、特に以下に挙げる項目については詳細を把握しておきましょう。
- ◦ 原状回復の定義(スケルトン状態での引渡しか、その他の仕様か)
- ◦ 原状回復工事の範囲(どこまで撤去・復旧するか)
- ◦ 指定業者の有無と相見積もりの可否
- ◦ A工事・B工事・C工事の区分と割合
- ◦ 経年劣化・通常損耗の負担割合
特に「スケルトン状態」の定義は賃貸人・賃借人の間で認識の齟齬が起こりやすいため、引渡し前に各所や設備状態のチェックリストの作成や写真での合意形成が有効に働きます。
また、工事区分も工事の進行や費用に大きく影響しやすい要素なので、事前把握を進めておくべき項目です。
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工事区分|A工事・B工事・C工事とは?
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工事区分を表すA工事・B工事・C工事は、物件所有者のオーナーや貸主と、物件を利用する借主との間で、工事の範囲・費用負担・決定権がどちらに帰属するかを区分けをしたものになります。
それぞれの違いや詳細な意味合い、指し示す範囲などについて、別記事で詳しく解説しています。 -
- 【 関連記事 】
- → 「A工事・B工事・C工事」を解説!押さえるべき基本知識
入居時の写真記録を用意しておくことで、退去時に求められる原状回復レベルの明確化に役立ちます。
見積もりを取る際の内容にも影響するので、早めに具体的な施工内容や範囲を確認し確定させるのが重要です。
余裕を持った工事スケジュールを組む
原状回復工事のスケジュールに余裕が無いと、次のような事態が発生して計画にズレが生じてしまいます。
- ◦ 工事期間が足りず夜間工事の実施を余儀なくされた
- ◦ 予期せぬトラブルで工期が延長し、追加の賃料が発生した
- ◦ オフィス移転の繁忙期と重なり見積の費用が高額化した
スケジュール自体に余裕があれば、業者や見積内容の検討、貸主や管理会社との交渉相談、オフィス移転の繁忙期との調整など、各種調整もゆとりをもって取り組むことができます。
その他不測の事態にも対処の選択肢を持ちやすくなるため、ギリギリの進行とならないよう注意を払いましょう。
円滑に原状回復工事を完了するために

オフィスの原状回復は賃貸借契約書の詳細な確認から始まり、工事範囲の確認や業者選定に見積の精査、貸主や管理会社とのやり取りからスケジュール管理など、多くの専門知識や経験を要求される複雑な側面があります。
また、トラブル発生時の対処や、事前の想定を重ねて問題を未然に防ぐのも重要ポイントですが、労力がかかりがちなため万全を期すには専門家の助けを借りるのが有効です。
カエル・デザイン・プロジェクトでは、オフィスの移転そのものだけでなく、付随する原状回復工事のマネジメントもトータルで承ります。
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