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- 健康経営実現にはオフィスづくりが重要!設計施工のポイント紹介
2025年12月8日オフィスデザインに関する話題

従業員の健康維持と企業の生産性向上を両立させる「健康経営」に注目する企業が昨今増加しています。
健康経営施策として、オフィス環境の整備は従業員にもたらす影響が大きく欠かすことのできない要素です。
本記事では、健康経営に即したオフィスづくりのために知っておきたい基本概念やメリットから、設計デザイン・施工の実践的なポイントまでを解説いたします。
目次
健康経営とオフィス環境との関係性

初めに、健康経営という概念そのものについて確認していきましょう。
また、なぜオフィス環境の整備が健康経営のカギとなるのか、その理由付けとなるメリットについても紹介いたします。
健康経営の基本概念
健康経営とは、経済産業省が推進する経営手法の一種であり、次のように定義されています。
- 『従業員の健康保持・増進の取組みが、将来的に収益性等を高める投資であるという考えの下、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて、戦略的に取り組む事』
- 【出典:経済産業省「健康経営オフィスレポート」P2】
上記の通り、健康経営とは単なる福利厚生に留まらず、従業員の健康への投資を事業成長のための戦略の一環として捉えるものです。
更に、健康経営の考え方に根差したオフィスのあり方である「健康経営オフィス」についても次のように定義されています。
- 『健康経営オフィスとは、健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場のことです。』
- 【出典:経済産業省「健康経営オフィスレポート」P3】
従業員が心身の健康上のリスクから生産性を落とすことを損失と捉え、個々の健康増進が結果的に組織全体の価値向上に繋がるという考え方がベースです。
経済産業省が設ける健康経営優良法人認定制度においても、オフィス環境改善に関する取り組みは「制度・施策実行」の評価項目に関係し、企業が健康経営の実践を目指す際の重要な要素となります。
健康経営に則ったオフィスがもたらすメリット
健康経営を取り入れたオフィス環境は次のようなメリットをもたらします。
- ◦ 従業員の生産性向上
- ◦ 離職率の低減と採用競争力の強化
- ◦ 企業イメージの向上
このようなメリットが得られる背景として、経済産業省が平成27年度に実施した調査では、200社以上・2万名以上のビジネスマンを対象に、オフィス環境が健康に与える影響を検証しています。
その結果、適切な健康増進行動を誘発するオフィス環境を整備することで、次の5つの健康的リスクの予防と改善に繋がることが明らかとなっています。
- ◦ 運動器・感覚器障害
- ◦ メンタルヘルス不調
- ◦ 心身症(ストレス性内科疾患)
- ◦ 生活習慣病
- ◦ 感染症・アレルギー
同調査によると上記のような予防・改善効果は最終的にプレゼンティーズムやアブセンティーズムの解消に寄与するとされています。
つまり、従業員が活力にあふれ十全にパフォーマンスを発揮できるオフィス環境づくりが最初に述べたメリットをもたらす図式です。
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プレゼンティーズムとアブセンティーズムとは?
- プレゼンティーズムとは、欠勤するほどではなく勤怠管理上は表面化しないものの、体調不良などの健康上の問題が理由でパフォーマンスが低下している状態を指します。
アブセンティーズムとは、病気やけがなどの健康上の問題により実際に仕事を欠勤(病欠)や休職している状態を指します。
どちらも従業員本人の生産性低下のほか、周囲や職場全体でフォローに回ることによる疲弊や士気低下を招くことから、従業員の健康増進によって可能な限り低減すべき経営損失と捉えられています。
健康経営オフィスの設計における3つの基本要素

経済産業省の「健康経営オフィスレポート」では、従業員の健康を保持・増進するための行動として、「快適性を感じる」「コミュニケーションする」「休憩・気分転換する」などが挙げられています。
これらは設計的なアプローチで誘発することも可能であるため、健康経営に根差したオフィス環境づくりにおいて意識するべき基本となる要素を紹介いたします。
光環境の最適化
オフィス内の光環境は従業員の健康とパフォーマンスに直接影響する重要な要素です。
オフィス内の各空間の機能や目的を果たし余分なストレスや疲労を感じることの無いよう、最適な照度・色温度の設定に気を配りましょう。
例えば一般的に執務スペースにおける作業領域の照度として、750lx前後を目安に確保することが日本産業規格「JIS Z9110」で推奨されています。
色温度としては執務スペースでは作業効率を高める昼光色(5000K程度)、休憩スペースではより低色温度(3000K程度)と、業務と休憩の切り替えを明確にできる設定がおすすめです。
また、サーカディアンリズムとも呼ばれる体内リズムは自然光の明るさの変化によって変調するため、一日中同じ明るさでは体内リズムが乱れるおそれがあります。
自然光を取り入れた照明計画や、余裕があれば自然光の変化を模倣した照明システムの導入を検討すると良いでしょう。
朝から夜への時間変化を感じやすい設計や、照明の色温度と照度を段階的に変化させるシステムが体内リズムの調整をサポートし、快適性の増加や疲労・ストレス軽減効果が期待できます。
空調と温熱環境の管理
清潔な空気環境と適正かつ安定した温度環境は、従業員の健康維持に不可欠です。
建築基準法では換気量基準として「一人あたり毎時20立方メートル以上」と定められており最低限の基準となっています。
一方、厚生労働省の設けるビル管理法では「一人あたり毎時30立方メートル以上」が衛生環境の確保の観点上推奨されており、より快適な環境づくりのためには可能な限り満たすべき基準と言えます。
換気には当然外気との入れ替えを伴うため、全熱交換型の空調システムを導入できれば換気と温度調整(冷暖房効率維持)を同時に行うことができ理想的です。
また、季節に合わせた適切な温湿度管理は、快適性の確保だけでなく乾燥による不快感や感染症リスクを低減します。
室温について夏季は26~28℃程度、冬季は20~22℃程度かつ湿度は40~60%程度を維持できるか確認しましょう。
音環境とプライバシーへの配慮
音環境の質もまた、集中力や作業効率、ストレスレベルに大きく影響します。
多くの場合、以下の基準が満たされる設計・運用が求められます。
- ◦ 一般的な執務エリア:40~45dB程度(図書館内の静かな環境に相当)
- ◦ 会議室:35~40dB程度
- ◦ リフレッシュスペース:50dB程度
著しく基準を超える要因がある場合は、天井に吸音パネルやグラスウール材を設置、壁面に吸音クロスや有孔ボードを施工するなどで室内の反響音を抑制するといった措置が必要になります。
また、会議室や応接室などで室内の音環境だけでなく、プライバシー保護を意識して外部への音漏れを防止するのであれば、遮音性の高い建具や壁材を検討しましょう。
ゾーニングによる音環境コントロールの観点では、オフィスレイアウトの設計段階で、静かな集中作業エリアと活発なコミュニケーションエリアを明確に分離しておくことも効果的です。
それぞれのゾーン間で適切に距離を設ける、収納家具やパーティションを配置し音の伝播を物理的に遮断するなどがよく用いられる手法です。
複合機やプリンターなどが騒音源になる場合は、専用のスペースに集約することで音による影響を最小限に抑えられます。
音環境のコントロールが適切であれば、コミュニケーションが適切に取りやすくなる、ゾーニングによって移動のため体を動かす動機付けとなるなどの行動面の副次効果も期待できます。
健康経営を実現するオフィス内装のトレンド

内装施工や家具選定時の配慮工夫によっては従業員の健康増進効果を期待できるため、オフィス内装のトレンドに基づいた具体的な手法について紹介いたします。
エルゴノミクスに基づいた空間設計
人間工学(エルゴノミクス)の原則に基づいた空間設計や家具選定は、身体的負担を軽減し長時間の作業による疲労を最小限に抑えてくれます。
個人のワークスペースは十分な幅や奥行きを確保し、作業上のストレス軽減や作業姿勢の改善を促すことが推奨されます。
高さ調整が可能なデスクや可動性を備えたチェアなど調整機能を有した家具・什器の導入により、従業員それぞれが自身の体格や作業形態に合わせた最適化ができるよう配慮しましょう。
例えばデスクワーク中心の場合、オフィスチェアは座面高さ、背もたれ角度、アームレスト高さが調整でき、ランバーサポート(腰部支持機能)を備えたものを選定すると疲労の蓄積が大きく軽減します。
バイオフィリックデザインの導入
オフィス内装において自然を感じさせる要素は、ストレス軽減やリラックス効果・創造性向上の効果が期待できます。
内装仕上げに無垢材や突板、石材などの自然素材を採用することで、視覚的・触覚的に自然を感じられる空間を創出可能です。
例えば木材の温かみのある質感は心理的な安心感をもたらし、リラックス効果があるため、休憩スペースに積極的に取り入れたい要素です。
植栽などの自然要素の配置も空気清浄効果に加えて、視覚的なリラックス効果があります。
壁面緑化やパーティションプランターを活用すれば限られたスペースでも導入可能ですし、空気清浄効果は無いもののフェイクグリーンを選定することで管理コストを削減できる可能性があります。
多様な働き方を支えるゾーン設計
業務内容に応じて働く場所を選択できる環境の提供も、従業員の満足度・生産性向上に役立ちます。
移動を伴うことで長時間の座位固定化が及ぼす健康リスクの低減にも繋がります。
一例としては目的別にオフィス内をゾーニングし、パーソナルな集中作業エリア、複数名で議論できるコラボレーションエリア、リフレッシュエリアといった特化したエリア環境整備を行うことです。
この場合、各エリアの照明、音環境、家具は目的に合わせて最適化することが重要となります。
ABW(Activity Based Working)の概念を導入して活動内容に基づいて働く場所を選ぶワークスタイルの推進や、フリーアドレス導入が可能な業態であれば、それに合わせたレイアウト設計も選択肢に入ります。
伴って私物や資料を安全に保管できる環境を整備し、通信環境や電源確保のための配線を床配線ダクトやOAフロアを活用して安全かつ美観を損なわないよう施工するなどの配慮を行いましょう。
オフィスに健康経営を取り入れる計画のポイント
健康経営をオフィス内装に取り入れる際に行うべき施策は多岐に渡り、一度に全てを実施するのは難しいケースも多いです。
そこで、計画的な導入を行うことで実行力を高めるアプローチ例を紹介いたします。
費用対効果を考慮して優先順位を付ける
優先順位を付けた上で段階的な導入計画を立てることで予算の平準化ができ、更に導入後の効果検証を並行して進められます。
比較的着手しやすく即効性の高い施策例としては次のようなものが挙げられます。
- ①従業員が普段づかいする家具・什器類の改善
代表的なところではデスクやチェアをエルゴノミクスに配慮した仕様へ交換することで、比較低コストかつ低負荷で腰痛や肩こりといった身体的負担の軽減が期待できます。
長時間デスクワークを行う従業員や実際に腰痛などの不調のある従業員から優先的に導入するなど、段階的な更新も行いやすいです。 - ②照明設備の見直し
照明のLED化は光環境の改善に直結し、ケースによっては電気代の削減効果も期待できるため、短期間で投資回収しやすい施策になります。
オフィス内のゾーンごとに逐次光環境を最適化し、必要に応じて調光・調色機能を追加できれば光環境の質を大幅に向上でき理想的です。 - ③空気環境の改善
オフィス内の空気環境や温湿度管理に課題を抱えている場合は優先度の高い施策です。
専門的な設備工事が必要になるものの、CO2濃度の適正化による全従業員の認知機能向上や快適性向上・健康維持に役立ちます。 - ④観葉植物をはじめとしたオフィスグリーン導入
初期投資を抑えることが可能かつ即効性のある施策で、利用人数の多いエリアを中心に配置すれば視覚的なヒーリング効果や空気清浄効果、湿度調整効果などの多面的なメリットが期待できます。
メンテナンスが負担になりそうな場合はリース活用も検討してみましょう。
既存オフィスのリノベーションを検討する
移転先での新規開設ではなく、現在のオフィスの環境改善から着手する場合は比較的導入ハードルを低く抑えられます。
ゾーニングや空間機能の見直しとして、可動式パーティションや家具レイアウトなどの局所的変更を行うケースをはじめ、次のような改善施策が例として挙げられます。
- ◦ オープンオフィス形態をとっている場合は個室感のあるブースを追加するだけでも、音環境と従業員の集中力を大きく改善可能。
- ◦ 作業領域の光環境が不十分であれば、スポットライトやスタンドライトを追加することで、既存配線を活かしながらエリアごとの光環境を調整可能。
- ◦ 利用機会が多い区画や動線上で印象に残りやすい部分を優先して壁紙やカーペットの張り替えを行うことで、最小限の予算で大きくイメージを転換。
オフィスの稼働を継続しながら部分的な改修を行う場合の注意点として、工事エリアを段階的に区切り、順次施工を進行できるように計画しましょう。
事前に従業員へ工事スケジュールと影響範囲を周知し、理解と協力を得ることが円滑な施工のポイントです。
オフィスに健康経営を上手に取り入れましょう

健康経営オフィスは従業員のパフォーマンスや幸福度向上と企業の持続的成長や価値向上を両立させる投資です。
ご紹介した光・空気・音の環境といった基本要素や設計トレンドのほか、従業員からのヒアリングに基づいた実施内容・優先順位の見定めも効果的な導入を行う上で重要です。
また、健康経営の視点を取り入れたオフィス環境改善には現状の課題把握や専門家による設計施工のアプローチが成功の鍵となります。
カエル・デザイン・プロジェクトでは空間設計・空間活用の専門家として、個別のご予算や課題に応じた最適なソリューションをご提案させていただいております。
健康経営の施策の一環としてオフィスの改善をご検討される際は、是非お問合せ下さい。
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