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2026年1月12日内装工事の施工と管理に関する話題

建築物の解体・改修工事を計画する際、有害物質として知られる「アスベスト(石綿)」の有無は必ず確認し必要な措置を講じなければなりません。
対応が必要であるにもかかわらず適切な処理を怠ると、法令違反や健康被害、工事の遅延や追加費用が発生する可能性があります。
本記事では解体工事の発注者として知っておくべき、アスベストの基礎知識や解体工事における具体的な対応手順を、法令や数値を交えて包括的に解説します。
目次
アスベスト(石綿)とはどんな物質なのか?

アスベストとは「石綿(いしわた、せきめん)」とも呼ばれ、微細な繊維状の天然鉱物群のことを指します。
まずは、その物質的な性質をはじめとした基礎知識、および健康上のリスクや危険性について確認していきましょう。
アスベストの基本的な性質と使用状況
アスベストは、次の6つのいずれかからなる天然鉱物繊維です。
- ◦ 蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)
- ◦ 角閃石系のクロシドライト(青石綿)
- ◦ アモサイト(茶石綿)
- ◦ アンソフィライト
- ◦ トレモライト
- ◦ アクチノライト
総じて耐熱性・耐久性・耐薬品性・絶縁性に優れていて、主な用途は建物の耐久性向上を目的とした吹付け材、屋根材や外壁材のスレート板、内装材の成形板、配管の保温材、断熱材などです。
その有用な性質からおおよそ1955年頃から広く建材として使用され、2006年に製造・使用が全面的に禁止されるまで様々な建物に使われてきました。
アスベスト使用のピークにあたる1970年代から1990年代に建てられた建物は、解体や改修時にアスベスト含有建材が見つかることも多く、特に注意が必要です。
また、アスベストの除去作業を含む解体工事は、2040年頃に工事件数のピークを迎えるとも言われています。
アスベストが持つ危険性
アスベストの繊維は目に見えないほど細かく、飛散した粉じんを吸入してしまうと肺がん、中皮腫、石綿肺など、呼吸器や体内組織に重篤な疾患を引き起こす危険性があります。
これらの疾患は潜伏期間が長期化する傾向にあり、15~20年、時には50年ほどの期間を経て発病することもあり注意が求められます。
長期間にわたって吸入が続くほど疾患リスクは高まるほか、少量の吸入でも健康上のリスクは否定できないため、解体工事では現場周辺での飛散による暴露を防止することが最重要課題となっています。
対策には当然コストがかかり、その分の費用が不動産の資産価値から減額されることから、建物の維持管理の点でも早い段階でのアスベスト調査の重要性は高いと言えます。
アスベスト除去を伴う解体工事における重要法令

解体工事におけるアスベストの取り扱いに関わる法令の中で、重要なものをピックアップしてご紹介します。
- ◦ 大気汚染防止法
2021年4月に改正され、規模に依らず全ての解体・改修工事でアスベストの有無の事前調査が義務化されました。
更に2023年10月からは建築物について有資格者による事前調査実施要件が課されており、2026年1月からは工作物の解体・改修工事も対象となります。 - ◦ 労働安全衛生法(石綿障害予防規則)
労働安全衛生法に基づく規則で、作業員の健康を守るための作業基準や保護具の使用、作業環境の測定、特別教育の義務などを定めています。
アスベスト除去作業における作業主任者の選任義務などを主に定めているのもこちらの法令です。 - ◦ 建設リサイクル法
延べ床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事の際は、着工日の7日前に建設リサイクル法に基づく事前届出が必要です。
各管轄の自治体へ届出を行い、アスベスト処理を含む場合はその旨も記載が求められます。 - ◦ 廃棄物処理法
アスベストを含む廃棄物を「特別管理産業廃棄物」として厳格に管理し、適正な処理方法を定めています。
アスベスト含有建材の危険性レベル分類
アスベスト含有建材は撤去時に粉じんを発生させる危険性の高さ(発じん性)に応じて作業レベルが定められており、解体工事の際には作業レベルに応じた飛散防止対策が求められます。
作業レベルごとの概要をご紹介します。

レベル1:著しく高い発じん性
アスベスト含有吹付け材が主に該当し、耐火建築物の梁・柱、屋根裏、デッキ裏や、空調機械室やボイラー室の天井・壁への仕上げ塗材として多く見られます。
撤去時にアスベストの粉じんが大量発生するおそれが非常に高く、厳格な作業基準や事前の届出義務が生じます。
解体工事での除去作業において、作業範囲との隔離や負圧化した前室の設置、湿潤化、アスベストの高濃度な粉じんに対応可能な防護マスクや保護衣の適切な使用など、厳重なばく露防止対策が必要です。
レベル2:高い発じん性
アスベスト含有保温材、断熱材、耐火被覆材が主に該当し、梁・柱、空調ダクト、ボイラー本体や配管などへの使用が見られます。
主に吹付け材であるレベル1と比べ、成形されているか塗り込められているため安定していますが、空気を含み脆いことも多いため切断や破砕時の飛散のリスクは依然高いです。
適切な保護具の着用や現場の十分な湿潤化に加え、該当材の切断等を伴う場合は作業範囲の負圧隔離も必須など、レベル1に準じて高いレベルのばく露防止対策が必要となります。
レベル3:比較的低い発じん性
重量0.1%を越えてアスベストを含む成形板(スレート板、ケイ酸カルシウム板、ビニル床タイル、セメント板など)からなる建材が主に該当し、屋根材や外壁材、内装材に見られます。
樹脂やセメントで固く成形されているため通常使用時における飛散リスクは高くないものの、切断・破砕時にはアスベストの飛散リスクがあり、やはり解体時には注意が必要となります。
厳格な隔離措置までは不要な場合が多いですが、やはり保護具の着用と現場の湿潤化を行った上で、飛散防止のためなるべく原形を保ったまま除去することが求められます。
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アスベストを含む建物の解体工事の流れ

アスベストへの対処措置を含む解体・改修工事の、事前調査から除去終了までの一連の流れを簡単にご紹介します。
1. 事前調査の実施
規模を問わず解体・改修工事前に作業範囲に含まれる全ての材料に対し、アスベストの有無の事前調査が義務付けられています。
2023年10月以降、建築物に対して建築物石綿含有建材調査者講習の修了者による調査が必須化されており、2026年1月からは、煙突や配管といった工作物も上記の有資格者による調査義務化の対象です。
解体工事範囲の床面積が80㎡以上の場合や、請負金額が100万円以上の改修工事に関しては、併せて事前調査結果の報告義務も生じます。
アスベスト含有製品の有無は、まず目視確認や建材種類別及び製造時期を設計図書などにより調査し、明確に判断できない場合については、現地にてサンプリングを行い定性分析にかけることになります。
調査費用の相場については、調査対象の規模や複数の調査法を必要とするかなどに依存し、価格幅も大きいため、正確な費用の把握には専門業者による見積もりが必要です。
最小限の内容(書面調査+目視調査+報告書作成)で済む一般住宅のようなケースなら 5~15万円程度 の費用感となる場合もあれば、規模が大きい建築物で複数箇所サンプルを取っての定性分析が必要な場合は 数十万円~100万円以上 かかるケースもあります。
2. 作業計画と届出
アスベストの除去作業を予定する場合は、作業レベルに応じて実施前に以下のような作業計画や各種届出が追加で必要になります。
- ◦ 特定粉じん排出作業実施届出書
大気汚染防止法に基づき、レベル1・2のアスベスト除去作業を含む建築物又は工作物の解体・改修作業を伴う工事において届出が必要となります。
作業開始日の14日前までに発注者(施主)が地方公共団体などへ提出する必要があります。 - ◦ 建設工事計画届
レベル1(レベル2では建設業者または土石採取業者が行う工事のみ対象)の除去作業を伴う場合は所轄の労働基準監督署へ届け出ます。
アスベスト除去作業開始日の14日前までに届出が必要です。 - ◦ 建築物解体等作業届
レベル2の除去作業を行う場合、実施するのが建設業者または土石採取業者以外の場合に、建設工事計画届に代わる形で必要となる届出です。
工事・建築物の規模に依らず、作業開始日の14日前までの提出が求められます。
-
レベル3除去作業の場合
- レベル3の除去作業においてはアスベスト起因で追加提出が必要な届出はありません。
ただし、アスベストの有無に関わらず提出する事前調査結果報告書や、建設リサイクル法で一定の要件を満たす場合に必要な届出は共通して存在するため注意しましょう。
3. 飛散防止措置と除去作業
アスベストの除去作業にあたっては作業レベルに応じた粉じんの飛散防止措置の徹底が求められます。
該当建材の十分な湿潤化や関係者以外立ち入り禁止措置、作業人員への特別教育の実施、適切な保護具の着用などの基本事項は全レベルに共通しています。
アスベスト粉じんの飛散が想定されるレベル1とレベル2の除去作業では隔離養生の措置が必須となり、工事範囲の作業場とその前室は負圧を保持しつつ、集じん排気装置の設置が必要です。
レベル3でも該当建材の慎重な取り扱いが求められ、可能な限り破砕などはせず原形のまま取り外すなど、アスベスト粉じんの発生を最小限に防ぐ対処が推奨されています。
4. 廃棄物の適正処理
除去工事で生じたレベル1・2のアスベスト廃棄物は「特別管理産業廃棄物(廃石綿等)」に分類されるため特に厳重な管理のもとに処理を行う必要があります。
解体工事の現場においては、除去したアスベスト含有建材を十分な強度を持つプラスチック袋などで二重に梱包し飛散防止を図ります。
また、梱包した袋などにアスベストが含有されていることを明確に表示し、通常の廃棄物と区別して処理を行うための取り計らいが必要です。
解体工事業者は、アスベストを含む特別管理産業廃棄物について処分業許可を持つ業者に処理を委託し、その後適正に処分されたことを確認する産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写しを5年間保存する義務が生じます。
アスベスト除去費用と工期
アスベストに関する対処は、解体工事そのものとは別に費用や期間を見積もる必要があります。
アスベストの除去作業にかかる費用や、事前調査から除去完了にかかる期間の目安を確認しましょう。
アスベストの除去にかかる大まかな費用
解体工事に伴うアスベストの除去費用は、建物の規模や除去の工法、求められる作業レベルなど、個々の諸条件によって大きく変動します。
一つの目安として、2007年に国土交通省が算出しているアスベスト含有吹付け材(レベル1~2相当)の処理面積に応じた除去費用の相場は次のようになっています。
- ◦ 処理面積300㎡以下:2万~8.5万円/㎡ 程度
- ◦ 処理面積300㎡~1,000㎡:1万~6万円/㎡ 程度
- ◦ 処理面積1,000㎡以上:1万~3万円/㎡ 程度
こちらのデータでも処理面積の小さい場合に費用幅が大きくなることが読み取れ、除去作業に伴う諸条件の影響が大きいことがわかります。
実際に除去費用を確認する際は、事前調査から廃棄物処理まで全ての工程を含んだ費用であるかどうかを確認することも重要となります。
調査・除去に必要な期間目安
- ◦ 事前調査
小~中規模の建築物でおよそ1~2週間程度。
(ただし、設計図書の有無、規模、構造の複雑さ、分析調査の必要有無などに依存) - ◦ 除去作業
レベル1もしくは2の作業レベルで通常の解体工事期間 + 2週間~1ヶ月以上
費用と同様に、作業レベルや建物の規模などの諸条件に大きく依存するため、あくまで目安の期間となります。
アスベストを除去すべき対象範囲が大きければ当然工期も長くなりやすく、作業レベルによって高い水準の対策が求められるほど計画の策定や届出、除去時の安全措置の準備や作業期間が必要になるため注意が必要です。
まとめ

アスベストはその健康に対する有害性が認知され完全に規制されるまでの間、広く使われてきた歴史があります。
年々アスベストに関する規制は強化されており、アスベストを含有する古い建材から健康被害が生じるリスクを最小限に押しとどめる社会的責任が課せられていると言えます。
解体工事の発注者の立場においても、費用や工期などへの配慮によって事前調査や除去作業の適正な実施に協力する姿勢や一定の責任を持つことが重要です。
不明点は早めに専門業者へ相談し、安全かつ法令を遵守した解体工事を実現しましょう。
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